11月24日、新潟で行われた日本LD学会で講演させていただきました。
LD学会とは、毎年行われる歴史ある学会で、発達障害について多角的に話し合いがされています。参加者としては教育者の方が中心となっていますが、医療や福祉も関わっており、2泊3日の長丁場の研修にも関わらず、毎年、数千人の方が参加されています。
僕は「10代の進路選択を親・教育・福祉がどのように支えていくのか」を目的としたシンポジウムの場に呼んでいただきました。親の会の方、高校の校長先生と一緒に登壇させて頂き、司会は大学の教授でした。
僕の役割は、学校を卒業後に働きづらさがある人に対して、どんな支援をすることで利用者の方が働き続けているのかを説明させて頂きました。
ずっと取り組んで来た「オーダーメード支援」についてや、訓練ポイントとしては技術訓練よりも生活、自己理解が重要であることを話したり、就労準備ができた方への本人の能力分析、企業の業務分析をしっかりとした上でMATCHINGまたはADJUSTさせていく必要性を話しました。
そして今回、一番伝えたいと思っていたことは、『人と違う=悪い、かのような社会の雰囲気に対して「“違う”を活用できない社会こそ悪い!能力がない!」と思いませんか?』ということです。
この想いが僕の中にずっとあり、いつか社会に一石を投じたいと思っていましたので、今回、現在取り組んでいる独自プロジェクト「社長の心理検査」の活動も話をさせて頂きました。
プロジェクトは「事業が成功している知り合いの社長に対し、すいせいの心理士がWAIS(心理検査)をとり、経営者には得意・不得意があるのか調べる。」
というものです。(注:あくまでWAISを取るだけで診断等はありません)
なぜ、このプロジェクトをしようかと思ったのかというと、現在、僕もいち経営者として経営勉強と啓発のため経営者の団体に通っています。団体に所属し3年近く経ちます。多くの経営者の方々とお会いしているうちに「個性的な人が多いな」と感じはじめました。
「なんでこんなに個性的なんだろう?」「子供の頃からかな?」と徐々に興味深くなって色々話を聞いているうちに、すいせいに通う利用者様と同じような「学校教育での勉強・人間関係・同調圧力などに苦労したエピソード」を幾つも聞くことができました。
そこで「この経営者の人たちも、発達特性の利用者様と同様の心理検査をすれば、同じような能力の凸凹結果が出る人も一定量いるんじゃないの」と仮説を立て、社長にWAIS検査を開始しました。
今回のLD学会の発表で、凸凹のある検査結果をまず参加者の教育関係者、心理関係、ご家族に見ていただき、「実は、この検査結果表は知り合いの経営者のWAIS結果です」と発表すると、皆さん驚かれたり良いリアクションをとってくださいました。
検査結果を出した社長は、幼少期から教育にはまらず、大衆のサラリーマンが向いていないことを早くから理解し創業された方です。幼少期のエピソードもいろいろ聞かせていただきましたが、すいせいに通う発達特性のある利用者様と同じような出来事が多くありました。
ただ、ここからが重要で、「利用者様と同じような能力、同じような出来事があるのに、なぜ片方は経営者になり、もう片方は就労困難者になるのか?」です。
発表させていただいた社長をはじめ、多くのクセのある(?)経営者のエピソードを聞いていると、一つの法則があるように思いました。
それは「幼少期、少年期に“人との違い”を“あなたらしさ”として親、家族、先生などの誰かに褒められた経験がある」ということです。
普通、学校で問題を起こしたり、集団行動を取れずにいると、学校でも家でも社会でも、どの大人からも怒られます。でも1人でも誰かが短所や問題行動以外の点に目が向き「違うから良いこと」を見てくれる、見つけて教えてくる人がいると、人生に大きな影響が出るのではないかと考えました。
「能力よりも、周りの大人がどう接し、本人の自己肯定感を育むかが、教育期の関わり方として重要なのではないのか」
大したデータがあるわけでもなく、こんな事を言っていいのかという迷いもありましたが、いま発達特性の子を持ち、不安や葛藤を抱えておられる家族さんに、少しでも可能性や安心のようなものを提供していく必要があるのではないかという思いで、LD親の会の方にもご相談させていただき、経営者の方達にも賛同していただき、学会でこのような事を提案させていただきました。
小さな小さな一石ですが、投じてみて少しスッキリしました。
「“違う”を排除ではなく、機能させられる豊かな社会」
この社会を実現するために、僕らSuiseiができることは、目の前の利用者様が社会で最大値が発揮できるように、本人、企業、社会にアプローチし続けることだ!と想いとスキルをさらに高め、今後も活動していきます!!
ABOUT
この記事を書いた人
岸田 耕二
社会福祉法人すいせい 理事長1981年生まれ、鳥取県出身。精神保健福祉士、産業カウンセラー。
2005年から就労移行支援事業所の施設長などを歴任。これまで東京大学プロジェクト参加、厚生労働省関連や神戸市福祉計画などの委員、ひきこもり支援、社会的養護者支援など幅広く活動中。
趣味はサーフィンとサッカー、娘二人のパパ。
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